第2回人気投票 イリヤ応援SS「俺さ、イリヤに告白しようと思うんだ(by士郎)」








「相談があるんだ」

三人の視線が集まる中、俺は開口一番頭を下げた。

「めんどくせー」

「あなたは少し黙ってなさい!!」

バゼットの鉄拳が突き刺さる。アヴェンジャーは高速回転しながらどこかに跳んでいった。

「それで、どうして私たちに相談を? あなたならもっと適任な方がいるでしょう」

「いや、三人は一応新キャラだから」

そう言うと、バゼットは呆れた表情を浮かべて、カレンは「ペッ」と唾を吐いた。

「この早漏」

「まだなにも言ってないだろ!? というかなんでおまえが知っている!? いや早漏なんかじゃない!!」

「言い訳は結構です。それよりも早く内容を。私とバゼットの口調が同じだから分かりにくいのです」

「いや、俺に言われても」

「そこをどうにかしなさい。神の試練です。そんなことも分からないのですか、この愚鈍は」

「カレン、なんか血が出てるぞ? 至る所から」

「生理です」

「そんなわけないでしょう!!」

再び唸る鉄拳。カレンは素早く避けたかと思うと、小ばかにしたように「ふっ」と笑った。
プルプルと震える男装の麗人をなだめて、俺は言った。

「いいから、喧嘩はやめろ。俺の相談ができないじゃないか」

「・・・・分かりました。すみません、カレン」

「いいえ。私の方こそ。では、相談事の話に移りましょうか。彷徨える子羊に希望を与え、どん底に突き落とすのが私の使命なのですから」

今度は綺麗に拳が突き刺さった。

 




バゼットの隠れ家だった洋館に俺たちは居た。一つのテーブルを囲むように並んでいる。
みんなが落ち着いたようなので、俺は真剣に切り出した。

「イリヤに告白しようと思う」

ぶほっ、とバゼットが飲んでいた紅茶を噴き出し、カレンはなんだか寒気の立つ笑いを浮かべた。

「ははは、ヤるのか? ヤっちまうのか? ひひひ」

「・・・・」

「ぬわあっ!! ギブギブっ、股間は勘弁ってにぎゃああああああっ!?」

硬い革靴の電気ハンマーに問答する刺青男を無視しつつ、カレンは真剣な表情で俺に向き直った。
珍しいこともあるもんだ。ちゃんと相談に乗ってくれるらしい。

「このぺド野郎」

「っていきなりそれかあぁあぁあぁあぁあ!!」

もの凄く真面目な顔で言われたから効果は抜群だ。マジでその目はヤメてください。泣きそうだから。

「分かってるんですか? 相手はまだ○4歳くらいの少女なんですよ?」

「伏字の部分が気になるんだけど分かっている。俺だって真剣に考えたんだ。登場人物は全て18歳以上だから全然OKだ」

「あの外見でそんなこと言われても信じられませんよね、普通は」

もっともな意見に頷く二人人。アヴェンジャーも真面目に考える気になったらしい。股間を押さえて涙目になりながらも健気に頑張っている。さすがはこの世全ての悪と言われるだけある。

「恋愛に年の差なんて関係ない」

「寝言は寝てから言いなさい。そんな犯罪まがいのこと、神が許さなくても私は許します」

「許すのかよ!?」

「それから警察にチクります」

「もっと酷いよ!!」

「・・・・士郎、キャラがどんどん離れていっています。自粛してください」

俺とカレンに割り込んできてバゼットが言った。
ああ、そうだな。なんだかカレンと話していると調子が狂う。横を見ると、アヴェンジャーも同意するように頷いていた。

「真面目に考えてくれ。俺は本気なんだ」

「本気と書いてぺドと読むんですね」

「それは違う・・・・のか?」

自分でも自信がないから断定できない。

「ってーかよ、てめぇがそんなハンパだから駄目なんだよ。男ならロリでもショタでも胸を張りやがれ」

「俺はショタじゃない」

「そうか? オレはどっちもいけるクチだぜ? なあ、バゼット」

「私にふらないでください。なんですか? 私が同性からモテそうだとでも言いたいんですか! あなたたちは!! ええそうですよ、何がお姉さまだ。なにが同性のよしみだ!!」

どうやら触れてはいけない傷に触れてしまったらしい。半狂乱の麗人は近くにいたアヴェンジャーをゲシゲシ殴っている。ああ、鼻血出して倒れた。それから踏んづけている。
ピクピクと白目を向いて泡を吐く姿に満足したのか、バゼットは清清しすぎる笑顔でこっちを振り返った。僅かに残る返り血が眩しいゼ。

「初めては同性ですか。いい気味ですね」

「やだあああああぁああぁぁぁぁああああああっ、なんで息を荒くして迫ってくるの!? 私たち友達でしょ? ねえ、ねえってば!? その手のワキワキ感はなんですかぁああああ!?」

カレンが傷口を切開してしまったせいで転がりまくるバゼット。あちこちに体をぶつけているけど気にしていない。ショックで脳内麻薬が大量放出中なのだろう。

「いい仕事をしました」

きらーん、とカレンの汗が光った。

「・・・・そのうち刺されるぞ」

「ええ、ぶっといので挿されましたけど」

「なんで下ネタに走りたがるんだよ。親父かアンタは・・・・カレンのせいで相談役の二人が再起不能になったじゃないか」

ゴミのように転がる二人に目を向けて、俺はため息を吐いた。

「安心してください。縁切りの魔女と呼ばわれた不肖カレン、あなたの力となってみせましょう」

「余計不安になったんだけど」

「いいですか、あの少女は大人の階段上る君はまだ○4歳さなんです。青い果実は熟れる前が美味しいのです。腐ってからでは遅すぎます。それでは虎柄です」

「・・・・なんか藤村邸の方で凄いことがおきそうな台詞だな」

「いいですか、今から言う作戦を決行すれば成功間違いありません。初号機のO9システムに迫る成功率です」

「もの凄く成功しない気がするんだけど」

「兎に角、耳を貸してください」

ちょいちょい、と手招きに従って耳を貸す。

「ふっ」

と、耳に息が吹きかけられる。

「舐めとんのかてめぇはああああああああああああああ!?」

ぎゃーす、と俺は今日何度目かも分からない叫び声を上げた。






そんなこんなで作戦決行当日。
イリヤを衛宮邸に呼び出して告白することにした。手にはイリヤへのプレゼント。これで幼いハートもチェケラっ、らしい(?)

「シロウ? 大事な話ってなに?」

バーサーカーに乗って現れたイリヤ。俺は見上げる形になって、プレゼントを渡した。

「イリヤ、愛してる」

「やっちゃって、バーサーカー」

「■■■■ーーーーッ!!」

「ぎゃー」






「カレン、士郎に何を渡したのですか?」

「ランドセルです」

「ひひひ! しかもヒョウ柄だぜえ!!」

「・・・・それはまた、アレですね」

その後、帰宅してきたみんなに踏まれてから、士郎は目を覚ましましたとさ。





                                                            おわり









〜あとがき〜


イリヤ応援SSの二作目。

一作目とどちらを投稿するか迷いましたけど、比較的大人しめのこちらを投稿することに。

やっぱりカレンは毒舌。早漏。というかそれが一番印象深いので。